成長期のスポーツ障害と栄養の密接な関係

子ども

日々の部活、地域のスポーツクラブ、親子でプロを目指すなどスポーツに打ち込んでいるお子様も多いと思います。しかし、大活躍していた子が怪我に見舞われるケースはめずらしくありません。また、厳しいトレーニングで怪我してしまったお子様も当サロンによくお越しになります。同じ練習をしていても怪我をしやすい子。しない子は何が違うのでしょうか。単に体質の問題なのでしょうか。

スポーツで生じる身体の怪我としては、瞬間的に大きな力が加わることによる捻挫・骨折などの「スポーツ外傷」と、身体に過度の負担が繰り返しかかることによる「スポーツ障害」があります。一般的に子供のスポーツ障害は、大人の骨と違い骨の端に近い部分が成長軟骨といわれる軟骨になっていることで、柔らかい骨に過度のストレスがかかり続けることや、成長過程で関節が緩いことが主な原因とされています。もちろんそういった器質的な要因もありますが、もうひとつ大きな要因となるのが栄養状態です。

毎日のお子様の栄養・食事に気を遣っている方も多いと思いますが、「身体のためにご飯は大盛りに」「肉は控えめで野菜たっぷりに」「パスタの時はサラダを足してバランスよく」「果物のスムージーを毎日摂る」といった具合になっていませんか?実はどれも身体に良い食生活とは言えません。何故なのかは後で触れるとして、まずスポーツ障害に関係の深い筋肉、骨が何から出来ているのかみていきましょう。

筋肉も骨もタンパク質が原材料

筋肉はタンパク質からできているということはご存知の方が多いと思います。また、骨といえばカルシウム!というのが常識ですね。しかし、カルシウムをたっぷりとれば骨が丈夫になるわけではありません。骨は鉄筋コンクリートのような構造になっており、コンクリートの部分はカルシウムですが、それを支える鉄筋の部分はコラーゲンで出来ています。そのため、コラーゲン部分の質が悪ければ、丈夫な骨とは言えません。骨密度が高くても骨折する高齢者がいるのはそのためです。その大事なコラーゲンは、タンパク質、鉄、ビタミンCから出来ています。つまり、筋肉や骨の材料であるタンパク質やビタミンC、鉄が足りなければ少ない材料で作り出さなければならず質の悪い、怪我のしやすい筋肉・骨になってしまいます。また、筋肉の伸縮性が悪いと関節に負担が掛かりますので、伸縮性に関わるマグネシウムも十分に必要です。

身体は食べたものからできている

当たり前の話ですが、筋肉や関節だけでなくヒトの組織をつくるための材料は全て口から摂取したものですので、日頃の食生活がとても大切です。薬で症状は緩和できても根本原因である筋肉や骨の質を変えることは出来ません。

また、筋肉も骨も一度作られたら終わりではありません。見た目は同じ筋肉でも、毎日絶えず細胞が入れ替わっています。細胞によって入れ替え期間が違うものの、速いものでは0.7日という速さで入れ替わります。これが栄養によって組織の質が変わる要因であり、毎日十分な量の栄養を摂る必要がある理由です。特に成長期は身体を大きくするための材料も必要です。

鍵は ”いのちのもと” タンパク質

ヒトの身体は、水分と脂肪を除くとほとんどタンパク質で出来ています。つまり、骨と筋肉だけでなくヒトの原材料の多くはタンパク質なのです。人類史600万年のうち、599万年は狩猟採集民族でした。畑を耕し、現在主食となっているコメ・イモなどの炭水化物をたくさん食べれるようになったのは人類史からするとごく最近の話です。進化の過程を考えれば、タンパク質が身体の原材料となっていることはとても自然なことです。また、身体の原材料となるだけでなく、生命活動のほとんども司っています。また、ビタミン・ミネラルの摂取に気を遣っている方も多いかと思いますが、たんぱく質が不足しているとせっかく摂ったビタミン・ミネラルは体内で活躍できません。

身体の至るところで必要なタンパク質ですが、具体的には、内臓や骨、皮膚、髪、血液、免疫の原料、ホルモンなど様々な形で体内に存在しており、つまり命を繋ぐのに必須です。摂取すると、もちろん命に関わる重要なところから使われていきます。タンパク質が十分でなければ、スポーツ障害に関連の深い骨・筋肉での消費分まで賄えません。鍛えても筋肉の材料がなければ逆効果で筋肉の質は悪くなり痩せてしまいます。では、どのくらい摂取すれば良いのでしょうか。

意外と多い、タンパク質の必要摂取量

厚生労働省が推奨している1日のタンパク質摂取量は小学校高学年で40~50g、中学生で45~55g。高校生になると男性で50~65g、女性で45~55gと言われています。あくまでも目安で、成人でも体重や活動量によって目標摂取量が大きく変わってきます。それだけ活動量が増えると使う量も増えるということです。運動されているお子様であれば、しっかり摂りたいですね。

タンパク質とは、肉・魚・大豆製品などに多く含まれますが、食品中のタンパク質含有量をいくつかご紹介すると、牛サーロインステーキ100gで17g、真アジ1尾で15.8g、納豆1パックで7g、卵1個で7g。全て食べても46.8gです。皆さんはどれくらい摂取できていますか?

食事からの摂取が難しければ、プロテインを活用するのも選択肢の一つです。プロテインというと、ジムで筋肉トレしている方のための物というイメージをお持ちの方も多いかと思いますが、プロテイン=筋肉強化剤ではありません。プロテイン=タンパク質です。

気をつけたい糖質。摂取は適量に

お米、パン、カボチャやトウモロコシなどの甘い野菜、果物は全て糖分が豊富です。食事内容を振り返ると摂取量の多くを糖質が占めているという方も多いのではないでしょうか。もちろん上記にあげた食物は、食物繊維なども摂れますので悪い物ではありませんが、摂りすぎには注意が必要です。注意が必要な理由は、血糖スパイクと呼ばれる血糖の乱高下が起きること。それから、過剰な糖により身体が糖化することです。

具体的にそれぞれ筋肉・骨にどのような影響があるかというと、血糖の乱高下、つまり血糖が急激に上がりすぎない方が良いというのは聞いたことがあると思います。血糖が急激に上がると、血糖を下げるために大量のインスリンが分泌されます。今度は血糖が下がりすぎてしまい、血糖を上げるホルモンが分泌。そのホルモンが交感神経を優位にするため、血管が収縮し血流が悪化します。もう一つの悪影響である糖化とは、体内で不要な糖とタンパク質が結びついて「AGEs(糖化最終生成物)」という老化物質を生成してしまう作用です。AGEsは体内で分解されにくく、骨に溜まれば脆い骨になり骨折しやすく、筋肉に溜まると本来の弾力と伸縮性のない硬い筋肉になってしまいます。

果物に多く含まれる果糖については、血糖を乱高下させる作用はないものの、そのまま腸から吸収され血液中に入ると速やかに細胞内に入っていきます。そのためブドウ糖の10倍ほどのスピードでAGEsを量産すると言われていますので、少量をゆっくり食べるには問題ないですが、スムージーなどにして一気に摂取するのは健康的ではありません。また、白砂糖などの精製糖質は本来存在しないものであり、添加物と考えるのが妥当です。プロテインを活用される際も、精製糖や人工甘味料には気を付けたいですね。

理想的な食事とは?

一番はお解りのとおり、タンパク質を必要十分量摂ることです。そして、ご飯も含めた糖質を摂りすぎないことです。

  • たんぱく質は動物性・植物性とそれぞれに良さがあるので偏らず色々なものから摂取を。
    卵は中でも良質なたんぱく質。アレルギーの心配がなければ多くの方におすすめです。
  • 血糖が急激に上がらないよう「野菜・きのこ類→肉魚→ごはん」の順番で食べる。
  • お皿1杯分の野菜、塩は精製塩でなく海塩の使用マグネシウムの摂取を。筋肉の伸縮性だけでなく貧血予防や丈夫な骨づくりにもつながります。

もちろん野菜や炭水化物も適正量摂れると良いですが、何より優先すべきはタンパク質です。小食ですぐにお腹がいっぱいになってしまうなら、タンパク質から摂るようにしましょう。パスタに足すべきは、サラダよりタンパク質ですね。

参考図書
大友通明著:寝たきりを防ぐ「栄養整形医学」 骨と筋肉が若返る食べ方

宮崎 沙織

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4年半大学病院で看護師として勤務後、ミオンパシーの施術を受けその魅力に惹かれてセラピストへ転身。ミオンパシーは長年痛みを我慢しながら生活されている方、付き合...

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